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永遠のパラドックス

プロローグ†夜の公園にて


 どのくらい見上げていただろう……
 十分か、はたまた一時間か。
 そんな時間の感覚さえわからない。
 でも彼女が来ていないということは待ち合わせの時間にはなっていない、ということだろう。
 あいつも時間には正確だった……
 周囲には誰もいない。住宅地のはずれにある小さな公園は、夜の闇の中で街灯の小さな明かりだけを頼りに、そこにあった。
 そこは特別な場所。
 ベンチに腰かけて夜空を見上げ続ける。輝く星々は大きな黒に物語を描く。いつかに教えてもらった話を細部までは覚えていない。あいつはとても詳しく知っていて、一緒に空を眺めながら丁寧に説明してくれた。
 もう一年も前のことだ。
 ━━━━一年前。
 あいつは━━━━。
 「佳祐君……だよね」
 彼女の呼ぶ声。変わらない。後ろから声をかけられたのに、それが彼女だとわかる。
 「あぁ、一年ぶり……か」
 振り返る。そこにはやはり一年前と変わらない彼女がいた。
 あぁ、変わらない。その栗色の長い髪も、俺より少し低い身長も。
 「そうだね。一年ぶり……」
 重なる。重ねてしまう。
 ━━━━わかっているのに。
 「どうして……こっちに?」
 なんで戻ってきたんだ、と。もっと話すべきことがあるはずなのに。
 「うん、お父さんとお母さんがね」
 覚えている。とても仲が悪かった。顔を会わせる度に喧嘩をしている、と聞いたことがある。
 「おばあちゃんがね。呼んでくれたんだ……」
 それでも世間体を気にしてか、離婚したという話は聞かない。つまりはそういうことだ。
 この街にあるのは彼女の祖母が住んでいる家。一年前までは貸しアパートの一室が家であった。
 「……悪い」
 「うん……」
 会話が途切れる。
 思い出す。否が応でも。
 暖かな日々。過去に失ったもの。
 「もう引っ越しはすんだのか?」
 「うん……昨日のうちにね。おばあちゃんもいろいろ手伝ってくれたから……」
 違う。言いたいことはもっと違うところにあるのに、うまく言葉が紡げない。
 そして━━━━彼女は言わない。
 「美咲━━━━、」
 だけど紡がなくてはならない。変えることなどできないと、わかっているのだから……
 彼女の体が微かに震える。しかし気づかない振りをする。いや、しようとした。
 「ごめんなさい……」
 彼女は目を伏せ、小さく肩を震わせたまま言う。
 「駄目だね……私、何も言えないよ……」
 でも先の言葉はやはり紡げなかった。それは彼女も、だ。
 「……わかった」
 どのくらい隠せていただろうか。
 彼女の様子を見るまでは。震えた言葉を聞くまでは━━━━。
 冗談だと思いたかった。それは今でも変わらない。
 「━━━━佳祐君、ごめんなさい……」
 どうして彼女が謝るのだろう。
 「ごめん……なさい……」
 どうして泣くのだろう━━━━。
 それは冗談なんかじゃない。
 それがわかってしまう。
 事実のみを突きつけられる。
 それを知り。受け入れて。
 俺は頭を抱えていつかに忘れたと思った涙を、流した。
 ━━━━一年前。
 隣で微笑んでいたあいつは。
 もう、いない。


始章END:


あとがき〜〜

前回に続きあとがきを書くほどの長さでも無いのですが・・・
これも複線・・・ですね。
青年(少年?)の背後関係は分かりません。分からないように書いたのですが・・・その実、完璧に物語の流れを決めているわけではないので、今後どうなるか。
この先の物語は彼の視点で描いていきます。当たり前にある日常。そこにある物は本当に当たり前のものなのか。
あなたに問いかけてみたいと思います。この物語の完結にあなたの心に何か残るものがあれば。
彼はいったい何を感じ、何を考えるのか。

感想等、よろしくお願いします。メールで送っていただけるようならこちらに→ kurohiro@anan.to
では、また次章であなたと出会えることを願い・・・

著;霜月ひろ









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